2000年初頭、日本政府の景気刺激政策により、起業のハードルがとても下がりました。それまでは最低でも300万円は必要だった起業の条件が、資本金1円でも認められるようになり、「1円起業」なる言葉が流行ったことを記憶している人も少なくないことでしょう。
そうして様々な業種で様々な人々がビジネスを興し、泣く人笑う人さまざまにあれど、「起業」ということ自体は、さして特別なことではなくなってきています。脱サラして起業するまではしないにしても、ひっそりと副業を営んでいる人々は少なくありませんね。
「何か新たな収入源を」と模索しているのは、満員の通勤列車で週刊誌を読むサラリーマンだけではありません。デフレによって収入の落ち込みが続く各地の農家の人々も、同じことでしょう。農家の人々は一般的に書類に弱く、起業などハードルが高いように思うかもしれませんが、いえいえ!ひょっとすると、もっとも副業起業にチャレンジしやすいのは、農家の人々かも!?
当ページでは、農家民泊とは何か、開業の手引き、そして心配事への対処法まで、どこよりも詳しく解説していきます。
1 農家民泊とは?まずは基礎知識を蓄えよう。
まずはそもそも、「農家民泊」とは何なのでしょうか?字面から大体予測することはできそうですが、これを機にしっかりと理解をしておきましょう。
1-1.農家民泊とは?体験をウリにする、田舎地域での簡素な宿泊業。
農家民泊とは、農村地域などの一般民家に宿泊滞在しながら、農業をはじめとしたさまざまな職業プログラムを体験するレジャーを言います。
「レジャー」と定義しましたが、メインとなるのはあくまで農作業などの「体験」のほうであり、民家での宿泊はオマケのような扱いです。そのため、旅館や民宿とは異なり旅館業法の規制を受けることがなく、非常に手軽に人を泊めることができます。
1-2.厳密に言えば体験民泊。プログラムは農業だけに限らない。
「農家民泊」という言葉が圧倒的に一般的ですが、その名前を冠していても違う職業体験が提供されている場合も。多いのは漁業、林業、畜産で、そのため「農林業体験民泊」が正式な名称であり、または「体験民泊」と呼称されていることもあります。
プログラムはさらに、漁業、林業、畜産にも留まりません。想像以上に多岐に渡っていますが、これについては後述することにしましょう。
1-3.脚光を浴び始めたのは2007年頃。グリーンツーリズムの高まりに合わせて。
農家民泊に類するものは、1992年頃に日本でスタートしはじめています。しかし、当時はあまり脚光を浴びることなく、ひっそりと展開されるのみでした。
時は過ぎて2007年頃。旅行レジャーの多様化の波が起き、団体旅行や有名観光地を巡るものに飽きた人々が、グリーンツーリズムに目を向けはじめます。農家民泊はグリーンツーリズムの一環で、「帰省する田舎」を持たないミドルエイジの家族が、「農業」や「田舎」、「自然」「おじいちゃんおばあちゃん」などを求めて、これに飛びつくようになったのです。この頃から、農家民泊を取りまとめる協会やサイトが日本各地にたくさん生まれました。
1-4.グリーンツーリズムとは?ヨーロッパで生まれた農村振興方策。
グリーンツーリズムのことを、「自然体験的なレジャー」だと思っている人が多いようですが、それは誤りですよ!レジャー形態の一種ではなく、元々はヨーロッパで生まれた農村振興方策の1つです。
本来の意味でのグリーンツーリズムとは、「都市型生活で疲弊した都市住民に、自然豊かな田舎でのリフレッシュを提供することで、農家所得をアップさせることを目的としたもの」と定義できます。1980年以降、特にイギリス、フランス、イタリア、ドイツなどで盛んに行われており、最近は韓国でも盛んになってきました。バブル志向の減退に合わせて、自然や田舎への求心力が強まるのでしょう。
日本では、日帰りから長くとも3日間程度の田舎体験が多いのですが、元祖ヨーロッパの場合、1週間以上のロングスパンで楽しむ人が多く、滞在者を飽きさせないようにその土地ならではの自然散策や乗馬体験などのスポーツも、提供されています。
1-5.農家民泊と農家民宿、どう違うの?農家民宿のほうは宿泊がメイン。
農家民泊について調べていると、「農家民宿」という言葉にも出くわすでしょう。農家民泊と農家民宿、どう違うのでしょうか?
農家民宿は「民宿」の名のとおり、旅館業法に則った簡易宿泊施設の1つです。自治体に事業申請する必要性があり、水回りや防災環境などもきちんと整えて運営されます。審査に通らなければ営業はできませんし、申請にお金も掛かりますから、とにかく農家民泊よりも起業ハードルが高いですね。
しかし実情として、農家民泊と農家民宿はほぼ同じような意味で扱われており、農家民泊なのに農家民宿を名乗っていたり、農家民宿なのに農家民泊のサイトに登録していたりといった混同も珍しくありません。