
1-2.リスク回避の方法が、無いわけではない。
上記の諸々のトラブル事例を見て、どのように感じましたか?頭が痛いですよね…。
前トピックの中では、敢えてトラブルとリスクの内容だけを並べ、その回避法・対処法については触れていません。が、回避法や対処法が無いわけではないのです。それについては、2つあとのトピック≪リスク回避のキーワードは、「ホームステイ型」民泊!≫の中で、まとめて解説します。
その前に、もう1つのリスク事案、経営そのものに関するリスクの話をしましょう。
2 民泊ビジネスで背負う金銭的リスク、信用リスク。
前トピックでは主に、マナーの悪い客が来てしまったときに背負う業務的なリスクについて記述しました。次は、お客がどんな人であるにせよ、民泊ビジネスを開始・運営することに伴うリスクのお話です。
2-1.Airbnb(エアビーアンドビー)ノウハウサイトの言うほど儲かりはしない。
エアビーアンドビーのノウハウサイトや民泊代行業者のサイト、民泊セミナーでは、一般的に、「普通に不動産賃貸に出すより3倍儲かります!」と豪語します。しかし、実情はそれほどの儲けは出ず、むしろ赤字の可能性のほうが高いくらいなのです!
具体的に、数字を出して解説してみましょうか。
・1カ月の収益。
①3LDKの場合、昨今の1泊の相場は10,000円ほど。
②日本のエアビーアンドビー物件の平均稼働率は60パーセント弱。
よって1か月あたりの見込み収益額は18万円程度。
・支出。
①3LDKの民泊用物件を借りるのに、家賃10万円、敷礼金仲介手数料50万円。
②家具や家電、インテリアの類を購入するのに50万円。
③投機経営であるなら民泊代行業者に業務委託せねばならず、その費用が月の売り上げの30パーセント超。18万×30パーセント=48,000円。
④エアビーアンドビーに支払う手数料が売り上げの10パーセントほど。18万×10パーセント=18,000円。
⑤3LDKの平均的な光熱費は月20,000円ほど。
⑥Wi-FiおよびポケットWi-Fiがほぼ必須なので、その月額使用料金が計8,000円ほど。
よって、家賃10万円+代行費48,000円+エアビーアンドビーへの手数料18,000円+光熱費20,000円+通信費8,000円=19.4万円。
では、収益から支出を引いてみましょう。
収益見込み18万円-合計経費19.4万円=マイナス1.4万円。
マイナス1.4万円です!
驚くべきことに、平均的な稼働率をマークしても、赤字になってしまうのです!Airbnbセミナーや民泊代行業者の試算では、支出金額が家賃の10万円だけになっているため、宿泊収入が10万円を超えさえすればもう黒字になる算段になっていますが、実際の支出はもっと多くなってしまうのですね。なお、彼らの試算の場合、1泊の料金を15,000円としていることが多いですが、すでに物件が飽和状態にある今、15,000円ではなかなか予約は入りません。また、彼らは試算稼働日数を20/30日としていますが、日本の半分の物件はその数字をクリアできていないのです。つまり、彼らの試算はまったく現実味のない「印象操作」に過ぎないということ!デタラメなのですよ。
仮に、1泊15,000円、稼働率20/30日(66パーセント)で計算してみましょうか。
収入見込み30万円-合計経費19.4万円=10.6万円。
さんざん先行投資をし、酔っ払い客の吐しゃ物の始末まで頑張っても、通常の賃貸に出した場合の6,000円アップにしかならないのです…。これはもう、絶望的な数字ですね。
さらに、この月額10.6万円の収益で、敷礼金などの先行投資費を償却しなければなりません。先行投資金を100万円としても、10カ月掛かるということです。
2-2.むしろ、普通に賃貸に出すほうが儲かるということ。
つまり、あなたが民泊用の空き家をすでに持っているとしても、民泊ビジネスをしたところで月6,000円ほどの儲けにしかならず、しかもそれは先行投資金を償却しきった10か月後のことです…。しかし、月6,000円程度のアドバンテージは、通常の賃貸に出した場合に得られる礼金や更新料で、簡単に上回ることができるでしょう。苦労して民泊ビジネスに参入しても、何の旨味もなく、種々のリスクを背負うだけなのです…
あなたが民泊用の空き家を持っておらず、民泊のために不動産を調達して行うならば、もっと深刻な状況に!100万円以上の借金を背負ったうえで利益はほとんどなく、稼働率が66パーセントを下回るなら、毎月延々と赤字を出し続けることになってしまう…
おわかりいただけますか?民泊代行業者側は、確実に月数万程度の利益を出すことができますが、民泊オーナーたちはほとんど利益を出せません。利益がほとんど無いどころか、赤字の可能性が高いのです。オーナーが十分な利益を出すには、100パーセント近い稼働率を、毎月出し続けなければならないということ!
投機ビジネスをやるなら、他のことのほうが良さそうですね。
2-3.あなたの物件でトラブルが起きれば、近隣住民からは嫌われ、立ち退きを命ぜられる。
トピック≪掃除だけでは済まされない。マナー違反者の尻ぬぐいの数々。≫でお話ししたように、宿泊客の中にはとてもマナーの悪い人たちがいます。そしてその被害は近隣住民にまで及び、被害をこうむった近隣住民があなたにクレームをぶつけてくる懸念があります。
クレームをぶつけられると、どうなるのでしょうか?
あなたは近隣住民から嫌われ、悪評が立つのはもちろんのこと、エアビーアンドビーの営業停止を命じられるでしょう。火事の火移りなどといったよほど大きな被害を与えないかぎり、訴訟問題に発展することはないとは思いますが、エアビーアンドビーの続行は厳しくなります。
その場合、「辞めればいいか」では済みません!
まず、せっかくの先行投資がムダ金になってしまいますね。あまり語られませんが、それだけではありません。撤退をするとなれば、その時点で入っていた予約をキャンセルしなければならなくなります。これには、罰金が発生するのです!
キャンセルによるあなたへの罰金は、
・7日前を過ぎると100ドル。
・7日以上先のものでも2回目以降なら50ドル。
・6か月間のうちに2回以上となると150ドル。
おそらく3カ月先まで予約を開放しているでしょうから、予約率が50パーセント程度であったとしても、罰金は10~20万円には達するでしょう。
2-4.トラブルが起きていなくても、常に撤退と隣合わせ!
もしあなたが、マナーの良い旅行者ばかりを選り分け、トラブルを起こさずに営業し続けられたとしても、やはり常に撤退と背中合わせなのです!
投機型民泊は、じきに営業ができなくなります。民泊業全体に関しては、旅行業法を改正してあらたに民泊法を制定し、規制が緩くなる見通しになっており、これまでグレーゾーンと揶揄されていた民泊は、めでたく法律の保護を受けることになるでしょう。しかし、投機型民泊に関しては、家主が不在で充分に宿泊客のケアができないために、営業が認められなくなるのです。
エアビーアンドビー民泊ビジネスは、たしかに儲かる時代もありました。しかし、今開始したところで、ほとんどリスクしかありません。