3 消防法と防災設備のキーワード解説。
法律関係の話では聞きなれない言葉がたくさん出てきますね。防災設備というのも、普段の生活ではあまり気を留めるものではなく、ピンとこないものも多いです。
そこで次のトピックでは、気になるキーワードを個別に解説していきます。
3-1.誘導灯とは?いわゆる「非常口ランプ」のこと。
誘導灯とは、いわゆる「非常口ランプ」。デパートや学校など大きな公共設備でよく見かける、非常口の場所を示す緑色の発光看板です。ちなみに、「非常用照明装置」も、これと同じものを指す言葉。
3-2.自動火災報知設備とは?学校の廊下で突然ジリジリ鳴る、真っ赤なパネル。
自動火災報知設備は、感知器が熱や煙の異常の感知し、受信機に火災信号を送って知らせます。受信機は警報ベルを発し、周囲の人々に火災の発生を知らせる設備です。自動火災報知設備は受信機、発信機、中継器、表示灯、地区音響装置、感知器から構成されたもの。
名前は聞きなれませんが、私たちはこれを日常の中で頻繁に見ています。学校やマンションなどの廊下にある真っ赤なパネルが、自動火災報知設備。突然ジリリリリリ!となりだして、ビックリすることがありますよね!キッチンの天井などについている化粧コンパクトのような丸い形のものが、感知器です。これに火や煙を近づけてはならないことは、皆さんもご存じでしょう。これらの機械は個別のものではなく、電子的に繋がっているのですね。
3-3.自動火災報知設備は「全室」に必要なので要注意!
自動火災報知設備の設置については、要注意点があります!
これは多くの場合に、「すべての部屋」に付けなくてはならないということ。たとえば、「民泊で使用する居室に設置」などと表現されている場合、設置が必要なのはゲストルームだけではありません!リビングやその他の寝室にも必要で、さらにはキッチンや浴室など、「部屋ではない空間」にも必要です。脱衣所に洗濯機を置いているなら脱衣所にも必要ですし、押し入れが布団をしまえるほどの大きなものなら押し入れにも必要となります。
ここには面白い逸話が。
日本初の合法民泊だけを集めた民泊仲介サイト「STAY JAPAN」を作った三口社長。彼は、41戸あるとあるマンションをまるごと民泊施設にしようと計画したものの、消防法許可取得のために自動火災報知設備の見積もりを出したら「全部屋に付けなくてはならないので3億円かかります」と言われ、断念したのだとか・・・。
3-4.防火設備の費用は?
普段の生活であまり自ら購入することのない防火設備。いくらくらいするものなのでしょうか?
(1)自動火災報知設備の値段。1つだけでも30万!
消防法対策の防火設備としては、これが最も高価となるでしょう。相場は、受信機1つなら30万円くらい。受信機5つだと65万円くらいのようです。注意すべき点は、多くの場合、民泊用のゲストルームが1部屋である場合も、リビングやキッチン、他の寝室など様々な空間に設置が必要となること。一戸だけでも100万円に上ることがありますし、同一マンション内の他戸にも設置しなければならないとなると、何百万、何千万というとてつもない額になってしまいます!
なお、簡易なものは数千円程度でも売られていますが、消防法の許可を得るためにはそれでは不充分ですからお間違いなく。
(2)誘導灯(非常用照明装置・非常口ランプ)の値段。10,000円以内でも見つかる。
大きさや品質によって様々ですが、正方形のコンパクトなものであれば10,000円以内で豊富に見つかります。ただし工賃は別。自力での取り付けも可能でしょう。
また、蓄光式の簡易的なものであれば、1,500円程度でも購入することができます。(蓄光市式の安価なものでも消防法の許可が取れるかどうかは、お住まいの地域の消防機関にご確認ください。)
(3)消火器の値段。3,000~7,000円程度。
消火器は、マンションなどにあらかじめ備え付けられているはずですが、自力で購入する場合、3,000~7,000円程度といったところ。
(4)防火カーテンの値段。3,000円程度から豊富に見つかる。
3,000円程度の手頃な値段から豊富に流通しており、購入に苦労はないでしょう。
(5)防火じゅうたんの値段。3畳サイズで10,000円程度。
防火加工のじゅうたんもそう珍しいものでも高価なものでもなく、3畳サイズが10,000円程度で見つけることができそうです。「防火」「防炎」「じゅうたん」「カーペット」「ラグ」などの言葉をいろいろ組み合わせて検索すると、見つかりやすいですよ。
3-5.総務省消防庁も、500㎡未満規模の集合住宅での民泊に警鐘を鳴らしている!
総務省消防庁は、簡易宿所ではなく民泊に特化した情報として、防火設備の基準を詳細に解説していますが、その中で延べ面積500㎡未満規模の集合住宅の民泊利用に、警鐘を鳴らしています。
総務省消防庁の発表する500㎡未満規模物件で想定される火災危険性は以下のようなもの。
(1)不慣れな火気使用設備を用いることによる、出火のリスク。
(2)消火設備の設置場所や使用方法を把握できていないことなどによる、初期消火失敗のリスク。
(3)宿泊利用者が119番通報を行わず、消防機関への通報が遅れてしまうリスク。
(4)施設に不案内なことにより、宿泊利用者の避難が遅れてしまうリスク。
(5)火災時の熱や煙を遮る防火区画が(建物内に)未形成であることや、耐火性能が劣ることなどのリスク。
要は、500㎡未満規模の集合住宅の場合、防火対策が粗末であるわりに避難には時間を要し、火移り被害も甚大になってしまうため、不特定多数の人々が頻繁に立ち代わる民泊(宿泊業)に向かないということですね。
3-6.平成17年の総務省基準の火災報知設備が備わっている集合住宅は、新基準のものに変更する必要はない。
法律はたびたび改定がなされます。消防法も同様で、自動火災報知設備の基準に関して、平成28年5月16日付けの「消防予第163号」という法令に上書きされていますが、平成17年発令の「第40号」の適用を受けている集合住宅を民泊に使用する場合、新基準の自動火災報知設備に切り替える必要はないことが正式に通達されました。