top of page

民泊経営と消防法-2


2 マンション(集合住宅)で民泊をするなら、消防法の設備条件は複雑!


マンションや団地などの集合住宅での民泊の場合、一軒家のときとは全く違う消防法の基準となります。集合住宅がどの程度の大きさか、そしてそのうちの何割を民泊に使用するかが大きなポイント。


2-1.集合住宅の延べ面積が500㎡以上の場合、消防法のための新たな設備は誘導灯と防火カーテンくらい。


500㎡を超える規模の集合住宅の場合、建設段階の規定ですでに防火設備が充実しているため、民泊のために新たに防火設備を設置する必要はほとんどありません。


まずもっとも高価な自動火災報知設備については、500㎡以上の集合住宅の場合、民泊の有無に関わらず建物全体に設置が必要で、つまり最初から取り付けられているので、民泊ホストが設置する必要はなくなります。


消火器についても、旅館・ホテルと集合住宅とでは設置基準が同じであるため、最初から備えてつけられているもので充分です。


誘導灯は、民泊物件の各部屋には不要ですが、廊下や階段などの共有部分に新たに設置する必要性があります。ただしこれも、避難口までの歩行距離が短かったり、視認性が良好であったりなど一定の条件を満たしていれば、設置する必要はありません。


防火カーテンや防火じゅうたんに関しては、民泊使用部分にのみ用いる必要があります。


なお、500㎡以上の集合住宅とはどの程度の大きさでしょうか?3LDKのマンション物件は70㎡程度ですから、共有部分の面積も考慮して、6戸もあるなら500㎡を超えそうです。ワンルームマンションの場合は、一部屋25㎡と仮定して20戸弱で500㎡を超えるでしょうか。


2-2.集合住宅の延べ面積が300㎡以上で民泊使用部分が1割を超える場合、全物件全室に自動火災報知設備が必要!


建物の延べ床面積が300㎡以上500㎡未満で、そのうち民泊使用部分が1割を超えるなら、建物全体(全住戸の全室)に自動火災報知設備が必要になります。消防法の許可を得るためには、見知らぬ人の住戸の全室にも、設置しなければなりません!無線方式のものも存在しているため、設置の手間はそう大がかりではありませんが、費用は莫大になるでしょう・・・。


消火器については500㎡以上の建物のケースと同様、もとから設置されているはずなので不要です。


誘導灯についても同様で、廊下や階段などの共有部分に設置すれば充分であり、かつ視認性などに問題がなければ免除されます。


防火カーテンや防火じゅうたんに関しては、やはり民泊使用部分にのみ用いる必要がありますよ。


このタイプの物件が、消防法の許可を得るための費用が最もかかるので、民泊目的の場合は避けるのが賢明。


2-3.2-1や2-2以外の規模・割合の場合、民泊部分と管理人室のみ自動火災報知設備が必要。


民泊で使用する集合住宅が、2-1や2-2で解説した規模・割合以外の場合、民泊で用いる住戸、および集合住宅の管理人室などに自動火災報知設備の設置が必要になります。


こういった表現だとあまり大事ではないように感じますが、ファミリー物件であれば5カ所以上は必要で、さらに管理人室への設置も民泊ホストの負担となりますから、100万円は大きく超えるでしょう。


ただし、建物の延べ床面積が300㎡未満なら不幸中の幸い!この場合、自動火災報知設備は、「特定小規模設備用自動火災報知設備」と呼ばれる簡易的なものでOK。これなら1つ15,000円程度と安価ですし、配線の要らない無線方式のものもあり、設置の手間やコストも少なく済みます。業者に頼まなくても、自分で設置することも可能。


消火器については他のケースと同様、もとから設置されているはずなので新規購入は不要です。また、建物全体の延べ床面積が150㎡に満たないなら、消火器の設置は不要。ワンルームが4つ並ぶ程度の小さなアパートなら、150㎡に満たないかもしれません。


誘導灯についても廊下や階段などの共有部分に設置すれば充分であり、かつ視認性などに問題がなければ免除されます。


防火カーテンや防火じゅうたんに関しては、やはり民泊使用部分には用いる必要が。


2-4.消防法の許可取得にお金を掛けたくないなら、500㎡以上の集合住宅がベター。


さて、集合住宅については防火設備の設置基準が複雑でしたね。要はどういうことか、これもわかりやすく要約します。


消防法の許可取得になるべくお金を掛けたくないならば、500㎡以上の大きな集合住宅がベターということ。これなら防火仕様のカーテンやじゅうたんが必須なだけで、あとは必要に応じて誘導灯を設置する程度で済みます。


最も大変なのは300㎡以上500㎡未満の集合住宅かつ1割以上の面積で民泊を営む場合。民泊を営む住戸はもちろんのこと、それ以外のすべての他人の住戸にも高額な自動火災報知設備を設置しなければなりませんから、破産どころの騒ぎではありません!


2-5.特区民泊の登録件数がぜんぜん伸びないのは、つまりこういうこと。


先日、「特区民泊の登録件数が100件を超えた」という報道がありました。


100件って・・・ニュースになるっていうことはスゴい数字なのか?と思ってしまいそうですが、よく考えてもみてください。日本のAirbnb(エアビーアンドビー)民泊の登録件数は45,000件を超える数。さらに国ぐるみで膨大な手間と時間をかけて制定した民泊特区法案。その結果が、1年経ってわずか100件とは・・・閑古鳥が鳴かずに泣きそうな、いや、閑古鳥すら居ないような寂しすぎる結果と言えます。


なぜ特区民泊の登録件数はこんなに少ないのでしょう?


集合住宅における消防法許可取得のハードルの高さ(費用の高さ)が、大きく足を引っ張っていることがわかりますね。ホームステイ型民泊ならおよそシーツとバスタオル代くらいで開業ができるというのに、家主不在の特区民泊だと消防法の許可を得るだけでも100万円だなんて・・・。


やはり民泊は、従来の旅館業法とは別の法律や規約を必要としていると言えます。

bottom of page