top of page

民泊経営で知っておくべき法律の数々-3


3 ビジネス民泊を合法で行うにはどうすればいい?


では次に、ビジネス民泊と法律の問題について解説しましょう。なおここでは、家主不在型民泊、投機型民泊を「ビジネス民泊」と称します。


3-1.ビジネス民泊への風当たりは非常に強い!


ビジネス民泊に関しても、政府の公式な(?)見解はホームステイ型民泊と同じく「保留中」と言えますが、実際問題としてホームステイ型民泊よりもずっと、風当たりが強いです。


無許可でのビジネス民泊を検挙したり規制・禁止しようとする自治体は多く、また通報しようとする民間人も多いので、法律の許可取得をしておかないと、何かあればすぐに営業停止に追い込まれてしまいます。


3-2.ビジネス民泊を合法で行うには、旅館業法の許可を取るか、特区民泊を営むかの二択。


2016年末の現状、ビジネス民泊を守ってくれる法律としては、「旅館業法」と「国家戦略特別区域法」(特区民泊)の2つが挙げられます。


旅館業法と国家戦略特別区域法、どちらも一長一短があり、各ホストの環境に合わせて選ぶのが良いでしょう。


3-2.旅館業法の取得はハードルが高いが、どこの都道府県でも可能。


まず旅館業法についてですが、これの長所はどこの都道府県でも許可取得の可能性があること。その代わり、条件は厳しく、民宿やゲストハウスを営むのと同じくらい、物件の選別(またはリフォーム・建築)に慎重でなくてはなりません。


そこらへんの一般的な賃貸物件を借りてくる程度では、旅館業法の許可は取得できないかも・・・。


3-3.旅館業法(簡易宿所営業)の許可取得には、いくつものハードルがある。


民泊の場合、旅館業法の中でも最も条件の緩い「簡易宿泊営業」の要件させ満たせば良いのですが、それでもいくつものハードルがあります。


3-3-1.簡易宿泊営業の条件だけなら、そんなに難しくはないけれど・・・。


まず、旅館業法(簡易宿泊営業)そのものが要求している条件は、このようなもの。


(1)ゲストルームの延床面積が、宿泊客1人あたり3.3平方メートル以上あること。

(2)ゲストルームに二段ベッドを設置する場合、上段と下段との間隔が1メートル以上あること。

(3)ゲストにとっての適切な環境(換気、採光、照明、防湿、排水の適切な設備)があること。

(4)宿泊人員の快適な利用を満たせる、充分なサイズのお風呂があること。(近場に銭湯があれば免除可。)

(5)宿泊人員の快適な利用を満たせる充分な洗面台があること。(目安は宿泊者5人につき1つ以上の洗面台。)

(6)宿泊人員の快適な利用を満たせる充分なトイレがあること。(目安は宿泊者5人につき男性用1つ、女性用1つ、計2つ以上のトイレ。)

(7)民泊物件の周囲100mに(大学以外の)学校、児童福祉施設、公民館、図書館、博物館、青少年育成施設などが立地していないこと(それらの運営を妨害しないこと)。

(8)その他、各自治体の条例に従うこと。


設備面に関しては、宿泊定員を4人以下に留めさえすれば、一般的な3LDK程度の賃貸物件でもどうにかなりそうです。しかし、実際に旅館業法の許可取得をしようとおもうと、さらに「建築基準法」と「消防法」の許可条件を満たさなくてはならず、それが非常に厄介!


3-3-2.建築基準法(用途地域)の許可をとれる物件が、住宅街には少ない!


民泊の許可取得について建築基準法は、それが100平方メートル以上の施設である場合、「用途変更」の申請が必要と命じています。また、100平方メートル未満であっても、用途地域がホテル・旅館業の営業を禁止している地域ならば、許可はおりません。


3LDKや4LDK程度なら100平方メートルは超えない(ことが多い)ので、用途変更については割愛しましょう。


多くのホストに関わってくる100平方メートル未満の「用途地域」の法律について解説します。


「用途地域」は、町の景観と快適な環境を守るために、エリアごとに建てられる建築物を定めた法律のこと。12種類に区分され、そのうち6エリアでは民泊経営が可能です。民泊が可能なエリアには〇をつけました。


×(1)第一種低層住居専用地域…低層住宅のための地域。

×(2)第二種低層住居専用地域…主に低層住宅のための地域。

×(3)第一種中高層住居専用地域…中高層住宅のための地域。

×(4)第二種中高層住居専用地域…主に中高層住宅のための地域。

〇(5)第一種住居地域…住居とともに中規模のスーパー、事務所・店舗などのある地域。

〇(6)第二種住居地域…住居とともにパチンコ・カラオケボックスなどのある地域。

〇(7)準住居地域…幹線道路の沿道。

〇(8)近隣商業地域…近隣住民が日常的な買い物をする駅前商店街などの地域。

〇(9)商業地域…百貨店、飲食店、銀行、映画館などの集まる地域。

〇(10)準工業地域…主に軽工業の工場や関連施設が建てられている地域。

×(11)工業地域…どんな工場でも建てられる地域。

×(12)工業専用地域…工場のための地域。


おわかりになられますか?民泊とは、ホテルや旅館の営業できない住宅街に泊まれることが一つの特徴であるにも関わらず、建築基準法では逆に、その「閑静な住宅街」での民泊営業を禁止しているのです!これは、建築基準法の基準が、民泊というよりも「旅館業全般」に適したエリアを考慮しているため。


結局これでは、都心の駅前や郊外のにぎわったエリアなど、ごく一部のマンションでしか民泊を営めない(旅館業法の許可を取れない)ことになってしまいます。


3-3-3.消防法の許可を得るためには、物件によっては何十万円もかかる!


旅館業法の取得に付随してくるもう1つの法律が消防法。消防法では、民泊を営む施設の規模やタイプによって、防火設備の設置を義務付けています。


これはリフォームの必要性を意味するわけですが、民泊のためのリフォームを許可してくれる賃貸オーナーさんがどれだけ居るでしょうか・・・。また、5~6LDKなどの大型一軒家や6棟程度の小型マンションを使う場合、必要な防火設備を設置するために、数十万~100万円以上の出費を要することに!


3-3-4.結局、旅館業法の許可を取得できるホストはほとんどいない・・・。


ご覧いただいたように、旅館業法の許可条件というのは、簡易宿泊営業のものであっても民泊にはあまりフィットしておらず、許可を取得するハードルもかなり高いのです。そのため結局のことろ、旅館業法の許可を取得できる民泊ホストなど、ほとんどいないというわけ・・・。


3-4.特区民泊の許可を取得するには?


法律のもとでの民泊。2つ目は特別戦略特別区域法で決められた民泊である、いわゆる「特区民泊」。


3-4-1.特区民泊を営むのも意外とハードルが高い。


特区民泊のフレコミは、「地域を限定することによる民泊の規制緩和」でした。それぞれの戦略特区の経済プランを民泊で後押しするために、規制緩和を戦略特区に求めたのです。


しかし、結論から言えばこの法律は大失敗!施行から1年経っても特区民泊の登録物件が100件しかないのですから、法律史上最大の失敗と言っても過言ではないくらい・・・。


ではなぜ失敗してしまったのでしょうか?簡潔に言えば、「思いのほか条件が厳しい」ということ。そのため許可取得ができないのですね。


3-4-2.民泊特区の許可取得条件はこのようなもの。


では具体的に、民泊特区が求めている条件を見てみましょう。


(1)民泊施設の延べ床面積が(べランダを含めずに)25㎡以上であること。

(2)出入り口や窓は、カギをかけることができるようになっていること。

(3)出入り口や窓を除いて、居室と他の居室や廊下などとの境が壁づくりになっていること(つまりふすまの部屋はダメ)。

(4)換気、採光、照明、防湿、排水、暖房および冷房について、快適な設備を完備していること。

(5)1施設につき1つ以上、キッチン、浴室、トイレおよび洗面設備を有すること(つまり相部屋や個室貸しはダメ)。

(6)寝具、テーブル、いす、収納家具、調理のために必要な器具・設備、清掃のために必要な器具を完備していること。

(7)賃貸借契約やマンション管理規約に違法していないこと。

(8)特区法上の最低日数は2泊だが、地域条例の定める最低日数条件に従うこと。

(9)民泊営業を近隣住民に説明すること。また、近隣住民からの苦情窓口を設置すること。

(10)チェックイン時には滞在者の本人確認を行い、名簿を作成し、保管すること。(必ずしも有人対応が義務付けられていないが、無人の場合は高額なカメラやIoT設備が必要になる。)

(11)ゲストの滞在中、少なくとも1回は、適切な使用がなされているか状況確認を行うこと。

(12)チェックアウト時にも滞在者の本人確認を行うこと(途中でゲストが入れ替わっていないか?増えていないか?)。

(13)英語でのハウスルール説明(防災案内・避難経路説明など含む)を徹底すること。

(14)施設・設備が消防法に適合していること。

(15)その他、自治体の定める条例に従うこと。


設備の内容としては、ちょっと高級なビジネス民泊によくみられるようなものです。しかし、チェックインの対応が難条件で、有人で行うか、または身分確認やゲストブック記帳を遠隔で対応できるような高機能なセキュリティシステムが必須になります。これをクリアできるホストがどれだけいるのでしょう・・・。


また、さらに自治体の定めるローカル条例にも従わなければならないことに注意!大阪などは民泊需要が大きい割りに、特区民泊に賛成していない自治体が多いため、結局は特区民泊の営業がかなり困難になっています。さらには、民泊関連の法令はしょっちゅう変わっている点にもご注意ください。必ず即近の情報を、最寄りの保健所に問い合わせましょう。


3-4-3.特区民泊の登録件数が伸び悩むのもうなずける厳しさ!


特区民泊の法律内容をご覧になられて、どう感じましたか?


特区民泊の登録件数が伸び悩んでしまうのもうなずける厳しさでしたね!結局こちらの法律に関しても、ほとんど現実的ではないということなのです。


3-4-4.民泊ビジネスは現状、「権利ビジネス」に陥っている・・・。


この実情はぜひ把握しておいてください。


結局のところ現状、日本の民泊業界というのは、「ホストたちが宿泊業務で収益をあげるもの」ではなく、「一攫千金を目論むホスト志願者をターゲットにした権利ビジネス」に陥っています。「法律の許可取るの難しいでしょう?弊社が手続きを代行してあげますよ。私のマンションなら民泊許可物件ですよ。」といった具合に、仲介業者ばかりが高利益を得ているような、歪んだ状況なのです・・・。

Comments


bottom of page