3 利益を求めて家主不在型民泊を営むなら、旅館業法の許可が必要!
さて、これまでは、記事タイトルに反して「旅館業法の許可が不要なケース」について考えられるものすべてを紹介してきました。ということは、上記に該当しないケースは旅館業法の許可が必要ということになります。
そして、残るケースを要約して言えば、「高い利益を求めて家主不在型民泊を営む場合」と言えるでしょう。
「投機型ホスト」とも言い換えられ、日本のAirbnb(エアビーアンドビー)市場の7割以上がこのタイプのホスト。皆さん、旅館業法の許可はちゃんと取得していますか?
3-1.民泊は、旅館業法の中でも「簡易宿所」に該当する。
では、旅館業法についての勉強を順に行っていきましょう。なるべくわかりやすく解説していきますね。
「旅館業法の許可」というと、面食らうかもしれません。「ホテルや旅館のような設備を整えないといけないの!?」と。でも、そんな必要はないのです。
旅館業法は、宿泊業の種類を、規模や性質によって4つに分類しています。
(1)ホテル営業。
洋式の構造および設備を主とする施設を設けてする営業。
(2)旅館営業。
和式の構造および設備を主とする施設を設けてする営業。駅前旅館、温泉旅館、観光旅館、割烹旅館が含まれる。民宿が該当することもある。
(3)簡易宿所営業。
宿泊する場所を多人数で共有する構造および設備を設けてする営業。ベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステル、ゲストハウス、カプセルホテルなどが該当する。
(4)下宿営業。
1ヵ月以上の期間を単位として宿泊させる営業。
このうち、民泊は(3)簡易宿所営業に該当させようということになっています。(もともと民泊はどれにも属していないのですが、近年の民泊規制の必要性からとりあえず簡易宿所規定をあてはめている、という状況。)
ホテルや旅館のような条件を満たそうと考えると途方もないリフォームが必要になりそうですが、ゲストハウスや山小屋が類似品と考えるなら、そう遠い道のりでもなさそうに感じますね。
3-2.旅館業法(簡易宿所)が求める民泊の条件は?
では具体的に、どのような条件を満たせば旅館業法(簡易宿所)の許可が下りるのでしょうか。
(1)客室の延床面積が、宿泊客1人あたり3.3㎡以上あること。(民泊以外の簡易宿所の場合は延べ床面積33㎡以上。)
(2)二段ベッドを設置する場合、上段と下段との間隔が1m以上あること。
(3)適切な環境(換気、採光、照明、防湿、排水の適切な設備)があること。
(4)宿泊人員が入れる充分なサイズのお風呂があること。(近場に銭湯があれば免除可。)
(5)宿泊者5人につき1つ以上の洗面台があること。
(6)宿泊者5人につき男性用1つ、女性用1つ、計2つ以上のトイレがあること。
(7)周囲100mに(大学以外の)学校、児童福祉施設、公民館、図書館、博物館、青少年育成施設が立地していないこと(それらの運営を妨害しないで済むこと)。
(8)その他、各自治体の条例に従うこと。
多くの人数を収容しようと欲張らなければ、そう難しくもないように見えますが・・・?
3-3.建築基準法や消防法の条件が付随してくる!
旅館業法(簡易宿所)の要件だけならそんなに難しくもないのですが、旅館業法(簡易宿所)の許可を取得する際は現実問題として、建築基準法や消防法の許可取得も必要になってきます。これらも簡潔に解説しましょう。
(1)建築基準法の条件:
100㎡以上の施設である場合、「用途変更」の申請が必要となる。また、100㎡未満でも建物の用途地域がホテル・旅館業に許可されない地域なら民泊は運営できない。
(2)消防法の条件:
消防庁に申請して立ち入り検査を受けたのち、消防設備や安全性のお墨付きをもらい、「消防法適合通知書」を発行してもらう。基準が曖昧なのでとりあえず検査をしてもらってから対策を取ろう。
3-4.「上乗せ条例」の問題がここにも。
旅館業法(簡易宿所)の条件の項の8つ目に、「その他、各自治体の条例に従うこと。」とありましたね。たった10文字の言葉ですが、これが意外に大きな難関になることも。いわゆる「上乗せ条例」として、さらに厳しい基準を突き付けられることがあります。
たとえば東京都豊島区では、「カウンター付き、かつ3㎡以上の広さのフロント(帳場)」がなければなりませんし、「宿泊者と対面でのチェックイン対応」をしなければなりません。
特に、対面でのチェックイン対応や対面でのカギの受け渡しについては、同じように条例化する地域は多くなるでしょう。つまり、多くの地域が家主不在型民泊を煙たがっているということ・・・。
3-5.旅館業法の許可申請はどのように取るの?保健所に行って相談しよう。
民泊物件の位置している都道府県の保健所で、申請や相談を受け付けています。ただし、保健所のある市や特別区では、それらの保健所で受け付けることが多いようです。
実際のところ、旅館業法の許可に必要な条件は自治体によって変わる(同じ項目でも緩かったり厳しかったりもする)ため、まずは保健所に相談に行きましょう。
3-6.農家民泊なら旅館業法の許可取得が規制緩和される!
民泊の中でも農家民泊に関しては、いち早く規制緩和が進んでいます。上述した条件よりももっと緩く旅館業法の許可が取れたり、経営が行いやすくなったりするので、農家民泊をするつもりなら知っておいたほうが良いですね。
以下が、農家民泊特有の規制緩和内容です。
(1)延べ床面積は、農家民泊なら33平方メートル以下でもかまわない。
(2)農家民泊のサービスの一環なら宿泊客を送迎しても道路交通法違反にならない。
(3)従来は農業体験ツアーの販売・宣伝は旅行業法に抵触したが、農家民泊が自ら提供する宿泊には、農業体験を付加してもかまわない。
(4)従来は、農業生産法人の事業内容に民泊は該当しなかったが、農業生産法人は事業の一環として民泊を営んでもかまわない。
(5)囲炉裏や茅葺き屋根のある家屋を民泊利用するなら防火加工が義務だったが、小規模の民泊であり避難上支障がないなら、加工はしなくてもかまわない。
(6)農家民泊の場合、消防長または消防署長の判断によっては誘導灯を設置しなくてもかまわない。
農家民泊に関しては、旅館業法よりも地域の自治体が許可の裁定を握っており、かなり緩い条件で認めてもらえる地域もあります。
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