民泊という言葉が一般化し、それどころか民泊を営む人もとても増えてきました。しかし、日本の民泊はほとんどの場合、違法状態で営まれていますし、民泊とは何なのか、その真意を勘違いしている人も少なくありません。
民泊とは、本来どのようなものなのでしょうか?現在はどのような解釈に変わってきているのでしょうか?誰でも運営することは可能なのか?
民泊とは何なのか、その基本の基本について、このページでは徹底解説していきます。民泊経営に興味を持つ人だけでなく、Airbnb(エアビーアンドビー)などの現代民泊に嫌悪感を抱いているような人にも、ぜひ読んでいただきたいものです。
1 本来、民泊とは?ビジネスのことは脇に置いて考えてみよう。
「旅館業法に違反するの?しないの?」「民泊って儲かるの?」と、いろいろと気になるかもしれませんが、まず最初に、昔から存在する言葉・概念としての「民泊とは」を解説していきます。民泊を誤解しないために、この学習はとても重要なことですよ!
1-1.本来、民泊とは、「民家に宿泊すること」ただそれだけの意味。
Airbnb(エアビーアンドビー)などのトラブルのニュースを聞いて、「民泊なんて嫌い!」「民泊なんて絶対利用しない!」とまゆをひそめる人も少なくないかもしれませんね。しかし実は、民泊を利用したことのない人なんて、一人もいないかも?
というのも、本来的に民泊とは、「民家に宿泊すること」「自宅に人を泊めること」を指す言葉なのです。お盆やお正月に、おばあちゃんの家に泊まったことはありませんか?親族を泊めたことはありませんか?きっとあることでしょう。
そう、私たち日本人にとって、民泊とはとても身近もの。むしろ毎年1~2回は経験している人が少なくないのです。
1-2.お盆や正月の帰省ではなぜ親戚の家に泊まるの?「助かるから」では?
一つ考えてみていただきたいことがあります。あなたはお盆やお正月に帰省するとき、なぜ親戚の家に泊まるのでしょう?
多くの人にとってそれは、「助かるから」ではないでしょうか。家族でホテルを取ったら1泊15,000円、3泊もすれば50,000円にもなりますが、親戚の家に泊めてもらうならそれがゼロ円で済みますね!
逆の立場として、なぜあなたは、お盆やお正月に親戚が顔を見せに来たら、「宴会が済んだらホテルに行きなよ」などとは言わず、自宅に泊めてあげるのでしょうか。それもやはり、「助けてあげたいから」という優しさに基づいたものでしょう。
民泊とは本来、このように、「助けるもの」であり「助かるもの」であり、「助け合うもの」なのです。
1-3.旅行の際の宿泊も、昔はもっぱら民泊だった。
農業や大工とは違って、旅館業は昔からあった職業ではありません。では旅館業の無かった時代、旅行者はどこに泊まっていたのでしょう?そう、民泊だったのです。
現代日本人には考えられないかもしれませんが、昔々の人々は、旅行の際に風雨をしのぐために、そこらへんの民家の戸を叩き、「一晩泊めていただけないでしょうか」とお願いしていました。ある程度食料やスペースにゆとりのある家庭は、「どうぞ」と泊めてあげていたのです。それはもちろん、「優しさ」に基づいています。
1-4.ホテル業界の民泊批判は、本末転倒?
昨今、Airbnb(エアビーアンドビー)などの普及により民泊を利用する旅行者が増え、そのためホテルや旅館などの既存の宿泊施設は顧客を奪われてしまいました。そのため、民泊に対して批判的な宿泊業者も少なくありません。しかしよくよく考えてみれば、その怒りは本末転倒なのかも?
というのも、旅行者にとって民泊が当たり前だった時代、宿泊費というのはほとんどゼロに等しかったのです。せいぜい稼業の手伝いをしたり、画家が絵を描いてプレゼントしたりといったものでした。しかし、「儲け」という動機で経営されるホテル業界の出現により、宿泊にかかる費用はどんどん高騰・・・。もちろん、民家ではお目にかかれないようなてんがい付きのお姫様ベッドにも寝られるようになったのですが、そんなぜいたくを求めていない人でさえ、毎晩7,000円か5,000円は払わなくてはならなくなってしまっています。
現代の民泊は、その高騰しすぎた宿泊費をリーズナブルなものに引き下げました。それは、100円ショップやファストファッション(ユニクロなど)、LCCが絶大な支持を受けたように大衆の多くが望むものであり、社会への貢献性は決して低くないはずです。
※極度の民泊ブームが落ち着いた2016年末段階、民泊はホテル業界のパイを奪うような構図にはなっていません。民泊よりもホテルや旅館のほうが高い稼働率を誇っています。
1-5.民泊とは本来、嫌われるようなものではない。それは「助け合い」だから。
現代日本では、Airbnb(エアビーアンドビー)という固有のシステムだけでなく、民泊という手法全体が煙たがられるようになってしまっています。しかしこれまでの長い長い間、民泊は毎年お盆やお正月にはあらゆる家族に利用され、エアビーアンドビーのそれと同じようにスーツケースをゴロゴロと轟かせ、はしゃぎ声の騒音を響かせてきました。それでも、民泊を批判するような声はほとんど聞かれませんでしたよね。
なぜかといえば、それは、民泊が「助け合い」の一つのカタチであったからでしょう。「東京からやってきた息子夫婦をウメさん家は泊めてやっているんだ。少々孫たちのはしゃぎ声がうるさくても、目をつむってやろうじゃないか」そうした寛容さもまた、「助け合い」の一環と言えるでしょう。