民泊がもたらした経済効果から、不動産投資としての価値を探る-4
- acousticlife111
- 2023年12月16日
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4 一人平和な、家主同居型ホスト。
不動産業界をも巻き込んだ、Airbnb戦国時代。生き残るのは誰なのか…?
Airbnb(エアビーアンドビー)の躍進は、社会が思っている以上にたくさんの物事へ影響をもたらしていきます。
4-1.「家具の無いワンルームを月6万で借りる」時代は終わる。
この、Airbnb(エアビーアンドビー)への「大手参入」という流れは、結果的に、民泊施設以前にシェアハウス物件を、日本中に増やすことになるでしょう。大手企業が大手ビルを使って「民泊」と名付けても、コクリコ坂やめぞん一刻のような人情的な民泊は行えません。
そしてシェアハウスの普及は、「従来型の通常賃貸」の衰退を招くでしょう。ある程度共同生活に耐えられる部類の若者たちは、この不況のご時勢、月額6万と30万もの敷金礼金を払ってワンルームアパートを借りたりは、しなくなります。
するとやはり、「家具の無いワンルームを月6万で借りる」というような業態は、廃れていくでしょう。月6万も払うなら、家具家電が付いてくる時代になるのです。敷金礼金も不要な時代になるのです。
つまり、それらの大手不動産会社・建築会社の面々は、自分のシッポを食いちぎるような事態になります。が、それはそれで、一命を取りとめるでしょう。
不動産業界の価格破壊だけが、起こるのです。
不動産業界の価格破壊は、自然な流れです。
航空業界はLCC(格安航空会社)が価格破壊を起こし、モバイル通信業界は格安通信会社(格安SIM)が価格破壊を起こしましたが、これまで暴利をむさぼっていた業界は、格安業界に主権を奪われていきます。
この「殿様企業から格安企業へ」のムーヴメントは、何にせよ、日本よりも欧米から先に起こっています。昨今の外国人観光客激増により、外国の情報ややり方がものすごいスピードで流入してきていますから、不動産業界にも格安化の流れが起きるのは、自然な流れでしょう。
4-2.超大手と超小規模(≒非営利)と、その二極化。
とにもかくにも、中途半端な資金力でのAirbnb(エアビーアンドビー)投機参入は、哀れな結果に終わる確率が高いです。Airbnbセミナーは、「儲かる!」と連呼していたかもしれませんが、それはAirbnbセミナーというものが、新規参入者を食い物にして儲けている業種だからです。彼らは、新規参入者が会費1万円のセミナーに参加してくれただけで「成功」であり、そのまま民泊代行業務にも契約してくれたなら、しめたものなのです。そのホストが、支払うべき家賃以下の収入しか得られないとしても、セミナーの運営者や代行業者には、どうでもよいことなのです。セミナー運営者や代行業者は黒字になり、ホストだけが赤字になります。
民泊業界で経済的に成功を収めるのは、ユニクロのような薄利多売を仕掛けられる大手企業か、または、「月5万の副収入が得られればラッキーかな」くらいにノンビリと考えている、家主同居型・ホームステイ型・人情型のホストの面々です。
特に、家主同居型の面々は、大儲けはできないながらも、負け戦の痛みとは無縁のまま、平和であり続けるでしょう。
彼らはそもそも多額の投資(借金)というものをしていないので、「負ける」ということはありません。「損する」ということはありません。
これはいたって単純明快で、絶対に正しい経済原理です。投資(借金)をしていないのですから、負けることも損することも無いのです。
そして、ホームステイ型民泊は政府にも欧米人にも歓迎されていますから、よほど高い値段を付けたりしない限り、そこそこゲストは訪れ、収入が得られるでしょう。月収10万20万は難しいとしても、月5万程度のお小遣いは、たんたんと入り続けるでしょう。
そして、このホームステイ型の彼らは、得られた月5万円のことはあまり気にしておらず、それよりも、出迎えた外国人ゲストとの交流・経験・思い出に、プライスレスな喜びを見出しています。民泊の本来の在り方は、そこなのです。
4-3.ホームステイ型の民泊は、まだまだ伸びる。
ちなみに、ホームステイ型の民泊に関しては、まだまだ伸びる余地があります。参入する余地が、あるのです。
「日本のAirbnbはついに2万軒を超えて飽和状態に入った!」と言われているのに、意外でしょうか?
カラクリは簡単です。たとえばホテルの場合、1軒につき部屋は100室にも上ります。もしホテルが2万軒も増えたなら、部屋数は200万室も増えることになります。
しかし、ホームステイ型の民泊施設は、1軒につき部屋数は1つです。多くても2つか3つです。すると、ホームステイ型民泊が2万軒増えたとしても、部屋数としてはせいぜい4~5万室といったところでしょう。日本政府は、2020年までに年間外国人観光客数を4,000万人に到達させる目標を掲げていますから、宿泊施設自体は、まだまだ必要なのです。
そもそも、ホームステイ型の物件が2万軒に達したわけではないのです。今現在は、投機型ホストによる家主非同居型の物件が数多く存在しています。そしてこれらは、これから減少していきます。
5 経済効果の先にある、喜びの循環。
民泊業界は、非常に珍しい立ち位置にあります。
アベノミクスのように経済成長を重視する日本政府は、通常、経済を活性させるものは何にせよ、後押ししています。21世紀の幕開けごろ、「1円でも起業ができる」という言葉が流行ったように、誰でもどんどん起業できる世の中になってきています。
しかし、Airbnb(エアビーアンドビー)に代表される民泊業界に関しては、様子が違います。トラブルの多い投資型物件に関しては、とても厳しい規制をかけるのです。【日本政府は、月5万程度しか経済を動かせないホームステイ型民泊には寛大で、数十万を動かせるポテンシャルのある投資型には、厳しい】のです。
この、日本政府からの予期せぬ「ホームステイ推進」の流れは、日本人にとっても外国人観光客にとっても、非常に有意義なものです。核家族化に伴って日本人が忘れ去ってしまったヒューマニズム(人情)や人との深い関わり合いを、取り戻す絶好のチャンスです。
「経済効果」という話をするとき、「どれだけの額のお金が動いたか」を見るのではなく、「どれだけの人が幸福になったか」を考えなければなりません。
外国の文化を体験するにあたって、生活空間を共にする民泊ほど、有意義なものはありません。民泊文化は、日本に訪れる無数の外国人に、その貴重な機会を提供することができるのです。私たちが民泊ホストを楽しめば楽しむほど、外国人ゲストを楽しませ、喜ばせることができるのです。かけがえのない思い出を、作ってあげることができます。
そうして同じ時間を密に過ごすことによって、日本人のことをさらに深く知ってもらうことができ、日本のファン、日本人のファンが、さらに増えていくでしょう。喜びの循環は、どこまでもどこまでも続いていきます。