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東京や大都市の不動産投資!国家戦略特区では民泊が正式に営業できるのか?-2


2 国家戦略特区は、民泊経営のための条件が「規制緩和されている」にすぎない。


さて、トピック1で解説したとおり、エリアだけでも相当に限定されている国家戦略特区民泊。しかし、頭を抱えたくなるような規制はまだまだあります。


2-1.旅館業法(簡易宿所)の認可は不要でも、国家戦略特区民泊の要件は満たさなければならない。


国家戦略特区かつ民泊条例が制定されたエリアで、賃貸借契約が民泊利用を認めていても、それで民泊経営が解禁されるわけではないのです。国家戦略特区法が謳うのは、こうしたエリア・家屋に対して「旅館業法(簡易宿所)の認可は不要だよ」と言っているだけ。そして、旅館業法認可の代わりに、異なる条件(特区民泊要件)を義務付けているのです。


2-2.国家戦略特区民泊の具体的な内容とは?


国家戦略特区民泊の要件については、居住の構造設備に関する要件、治安保持のための要件などを別々に表記するサイトが多いですが、それではややこしいので、1トピックでまとめて解説します。とにかく、下記のような要件をすべて満たさなければならないのです!


(1)民泊施設の延べ床面積は、25㎡を超えていなければならない(ベランダを含めずに25㎡)。

(2)入り口および窓は、鍵をかけられるものでなければならない。

(3)入り口および窓を除き、居室と他の居室、廊下などとの境は、壁作りでなければならない(障子はダメ)。

(4)適切な採光、照明、換気、防湿、排水、冷暖房の設備を有していなければならない。

(5)浴室、トイレ、キッチンおよび洗面所を有していなければならない。

(6)寝具、テーブル、いす、収納家具、調理のための器具・設備および清掃のための器具を備えていなければならない。

(7)国家戦略特区法上の最低日数規定は2泊だが、そのうえ自治体の民泊条例の定める日数に従わなければならない。

(8)事業内容の一部に、民泊事業を含んでいなければならない。

(9)民泊営業を近隣に説明し、近隣からの苦情窓口を設置しなければならない。

(10)チェックイン時には滞在者の本人確認を行い、滞在期間、氏名、住所、職業、国籍、パスポート番号について記載した名簿を作成し、保管しなければならない(=事実上有人チェックイン対応)。

(11)民泊ゲストの滞在中、少なくとも1回ずつは、適切な使用がなされているか状況確認をしなければならない。

(12)チェックアウト時にも滞在者全員の本人確認を行わなければならない。

(13)居住構造が消防法に適合していなければならない。

(14)さらに、各自治体の条例に適合していなければならない。


居住構造における条件は、たしかに旅館業法(簡易宿所規約)よりも規制緩和されているのですが、チェックイン対応など治安保持についての条件は、むしろ簡易宿所規約よりも厳しいと言えそうです。


2-3.実はまだある!国家戦略特区民泊に必要な要件。


一般的な報道で案内されている要件は前トピックのとおりですが、実はそれ以外にもまだ、

国家戦略特区法の中で課されている要件があります。


(1)ハウスルールの備え付けとクギ刺し説明。下記の内容を必ず含むこと。

・民泊に備え付けられた設備の使用方法解説。

・廃棄物の処理方法。

・騒音などで周囲に迷惑をかけてはならないという警告。

・火災などの緊急事態が発生した際の、通報先と初期対応の方法。防火・防災設備の使用方法。

(2)ゴミは事業者ゴミとして出さなければならない。その際の処理方法を民泊ゲストに英語で説明しなくてはならない。

(3)浴室の水が飲用に適した水でない場合、「飲用不可」の表示をしなければならない。

(4)水道の水が下記の水質基準に適合していなければならない。

・色度(黄褐色の度合い)が5度以下であること。

・濁度が2度以下であること。

・水素イオン濃度の数値は、5.8~8.6の範疇であること。

・過マンガン酸カリウム消費量が、水1Lあたり10mg以下であること。

・大腸菌が検出されないこと。

・レジオネラ属菌が、100mlの検水で形成される集落数が10未満であること。

(5)滞在者の病気、事故、事件などの緊急事態に備えて、認定事業者(民泊ホスト)と常に連絡できる体制を整えなくてはならない。

(6)テロや違法薬物使用などの違法行為を防ぐために、滞在者の身柄について諸々の確認作業を徹底しなければならない。(項目が多いのでページの都合上割愛。)

(7)対応している言語についての案内を、ホームページなどに掲載しなくてはならない。

(8)必ず日本語以外の1言語にも対応していなければならない。

(9)これらの要件を満たしていることを証明できる各書類14種(以上)を、保健所に提出しなければならない。


2-4.結局、国家戦略特区民泊の認可を取得したホストはほとんどいない・・・。


このように、現実問題として、国家戦略特区民泊法の要件は相当に厳しいものとなっています。そのため、国家戦略特区民泊法の認可を取得した民泊ホストは、この法律が施行されてから1年近くが経つ今となっても、ほとんど現れていません。


2-5.国家戦略特区民泊は完全に失敗!今さらこの認可を取得する意義は限りなく低い・・・。


つまるところ、国家戦略特区法に基づいた民泊規制緩和は、完全に失敗に終わったと言えそうです。この失敗の要因は、大きく分けて2点挙げられます。


1つは、国が国家戦略特区民泊法の要件のハードルの高さを理解できていないこと。そしてもう1つは、地方自治体つまり大衆と国とで、民泊への温度差があまりにも開きすぎていたことが挙げられます。


これから民泊条例を制定する国家戦略特区エリアはほとんど無いとみられますし、また、さらに規制緩和が進んだ民泊新法が2018年初頭にも発令されそうな機運となっている今、国家戦略特区民泊の認可を取得する意義は、限りなく低いと言えるでしょう。


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