ライティングの仕事を受注していると、文章のクオリティに対してものすごくシビアなディレクターが多いです。
「~です。~です。」と同じ文末が2回続いただけで書き直しを命ぜられたりします。文末のバリエーションが少ないと小学生の作文みたいな稚拙な文になってしまうというのは真実ですが、かといって2回続いたくらいで「間違い」と定義するのは極端すぎます。日本人に自殺者が多いのも頷けるというものです。
(私の観点から言えば、3連続まではギリギリセーフです。)
他にも、接続詞が多すぎるとか少なすぎるとか、様々な制約が飛び交っており、それは年々増え続けています。
これは、アフィリエイトの成約が業界全体で低迷しているゆえに、「ライターの文章が稚拙なせいだ」と考えてやり玉にあげられているのですが、この考えは根本的に間違っています。
2つの観点から、間違いを指摘できます。
(1)Googleクローラーは、誤字脱字をマイナス評価したりはしない。
アフィリエイトサイトのディレクターが考えることの第一が、検索順位の上下です。そして、Google社の発表しているサイト評価の基準に、「文章の稚拙なサイトはマイナス評価」といったものがあります。だからディレクターは誤字脱字や稚拙な文章表現にうるさいのですが、実情としてGoogleのクローラーは、そのような細かい点を分析することはできていません。
これは、検索結果の上位に2ちゃんねるのページや個人ブログが登場することがあるというケースから証明されています。
ご存知のことでしょうが、2ちゃんねるというのは個人の書きこんだ掲示板投稿文で構成されています。そしてこの書き込みは、世界で一番と言えるほどにスラング(乱れた言葉)が多く、誤字脱字ミスどころの騒ぎではありません(笑)さらに日本の場合、アスキーアートや顔文字という独特の文化あり、これらも文章としての意味を為していません。コピペ文もわんさかあります。
つまり、2ちゃんねるのページは小学生の作文よりもさらに乱れた日本語の羅列なのですが、それでも検索結果の上位に来るのです。(これは、2ちゃんねるの持つサイト総文字数と、1ページ当たりの文字数が膨大だからです。)
もう1つわかりやすい例としては、食べログや@コスメなどでしょうか。どちらも個人からのクチコミサイトで、文章の8割は素人の書いたテキトウな文です。これらも誤字脱字が多いですし、スラングや略語、顔文字であふれています。
それでもGoogleクローラーはこれらをランキング1位や2位に掲載します。
文章のクオリティというのは、検索結果の上下にあまり関係がないのです。
(2)閲覧者は誤字脱字をあまり気にしていない。文の真面目さも気にしていない。
「Googleの評価ではなく閲覧者の評価が下がるから文章の質に気を配るんだよ!」と反論する人もいることでしょう。
SEO対策やサイト作りのセオリーとして、一般的にそう言われていますが、実際のところ大衆閲覧者も、文章の真面目さや誤字脱字など、あまり気にしていません。
たとえば、「ねとらぼ」などはかなりくだけた文章を書きますが、それでも情報メディアとして大手の1つに君臨しています。タイトルに「ww」を入れたり「キタ――(゚∀゚)――!!」を入れたりスラングを入れたりしますが、それでも閲覧者たちはこのサイトを訪れ、リピートをします。
今や、ヤフーニュースが提携するようになったくらいです。
他にも、旅行サイトなどは、個人の旅行レポートを積極的に利用しますが、個々の文体をそのまま尊重しているサイトがとても多いです。
そしてもちろん、読み手はその素人臭さや文章のつたなさを、あまり気にしていません。
欲しい情報があるなら、読み手としてはそれで満足なのです。
もう1つ例を挙げましょう。
天下のヤフーのヤフーニュースには日々何千もの記事が上がってきますが、その中には誤字脱字の残ったものがけっこうあります。新聞社からリリースされた記事にすら、誤字脱字が混じっていたりします。
しかし、それで大衆がヤフーニュースを読まなくなるかと言えば、そんなことは無いのです。人名に関するミスや、面白おかしいミスに関してはコメント欄でやり玉にあがっていますが、しかし些細なミスは大きな問題にはなっていません。
細かいミスを指摘するのは、誰の得にもなっていない。
ディレクターさんに問いますが、あなたは記事をライティングしたことがありますか?10,000文字のライティングをして、それを3周り誤字脱字チェックしたことがありますか?
文章の見直しというのは、意外と時間がかかるものです。10,000文字にもなると、1周するだけで30分も掛かります。誤字脱字を完全に防ぐには3周は必要なので、これだけで1時間半です!10,000字ライターは、誤字脱字チェックのために毎記事ごとに90分も時間を使っているのです!
もしこれを、「誤字脱字チェックは1周してくれれば充分だよ。たまにはミスがあってもいいよ」と寛大な指示に変えるなら、このライターは同じ労働時間で、あと2,000字書けます。10,000字の記事は12,000字になるのです。1.2倍です。
また、文章についてあまり細かい注文を付けないなら、記事を書く時間が短くなります。言い換えれば、同じ労働時間で書ける文字数がさらに増えるわけです。
もし、ディレクターが文章のクオリティに対してもっと緩くなったら、ディレクターはもっと早く多くの文字数を稼げるし、ライターはもっと効率よくお金を稼げるようになるのです。
もし、ディレクターが文章のクオリティに対してもっと緩くなったら、「あなたは文章能力が低いからクビ」と言われたライターが活躍できます。ライターの数はもっと増えます。専門職のライター(月間20万字も書いてくれるライター)ももっと増えます。そしてディレクターは、ライターの募集や採用、育成にかかる手間・時間・費用が大幅に減らせます。
5,000文字→8,000~10,000文字!
私は、委託されて記事を書くこともありますし自分のサイトの記事を書くこともあります。
委託されて書く場合、ディレクターからの制約をあれこれ考慮して書き、誤字脱字チェックを3周りやるので、3時間労働して5,000文字がせいぜいです。
対して、自分のサイトの記事を書く場合は、あまり文章の制約を作りませんし、見直し作業も1回しかやりません。すると、3時間あれば8,000~10,000字くらい書けます。倍くらい違いますね。
ある程度の文章を書けるアフィリエイターは、ライターを雇わずに自分で記事を書きます。
彼らは、文章はややつたないですが、しかし私と同じくらいの速度で文字数を増やしていくでしょう。すると、効率化のためにライターを雇っているディレクターよりも、自前で書いている彼らのほうが、サイトの充実が速いのです。
納得できるライターを何人も何人も選考して雇うよりも、自分で書いたほうがずっと早いのです。
文字数はSEO対策の生命線なので、自力で書いている彼らのほうが先に、検索結果の上位に躍り出ます。
「委託するほうが速い」と思っているディレクターは多いですが、しかしあまり厳しいことを言うなら、委託は悪循環にしかなりません。
「正しい文章」というのは幻にすぎない。
そもそも、「正しい文章」などというものはありません。
アフィリエイトサイトのディレクターの多くは、それぞれに独自の文章セオリーを持っています。「これが売れる文章だ」と確信しているものを、それが一般常識であるかのごとくライターに強要してきます。
しかしコッケイなことに、その「正しい文章」の定義が、ディレクターによって違うのです。
あるディレクターは「接続詞は無くても通じるし、無いほうが文章がスマートで読みやすいから極力削れ」と言い、そしてまたあるディレクターは、「接続詞がないとわかりにくいから徹底して付けてください」と言います。まったく逆です(笑)
あるディレクターは、「『つかみ』でプロかどうかが出るので饒舌にたっぷり書いてください」と言い、またあるディレクターは、「『つかみ』なんて誰も読んでない飾りにすぎないから2行で済ませてくれ」と言います。まったく逆です(笑)
このようなことがたくさんあります。
どちらのディレクターのサイトもそこそこに売れ、そしてそこそこに低迷傾向に陥っています。どちらの文体も、売り上げ増減には直結していないということです(笑)
アフィリエイトサイトのディレクターの多くはこのように、「こういう文章が売れる」「こういう文章じゃないとコンバージョン(成約)を取りこぼす」と思い込んでいるだけなのです。そう思っているのはディレクター当人だけで、グーグルクローラーも閲覧者もまるで気にしていません。
もちろん、文章はテキトーで良いというわけではありません。
しかし、ある程度読んで理解のできるものであれば、「正解」の幅はかなり広いものです。口語体で売れているサイトもあれば「だ。である。」調で売れているサイトもありますし、あきらかに文章の下手な人のサイトがコンバージョンは伸ばしていることもあります。
「商品との相性」という話でもなく、スキンケアコスメのアフィリエイトサイト1つ取っても、スキンケア大学のような「ネットでよくあるですます調」もあれば、「私が使ってみた範囲では、ダメダメです!」という個人ブログみたいな文体のサイトもあります。
また、医師が書いている記事でも文章のややつたないものがあります。
結局、売り上げを左右するのは文章の精度うんぬんではなく、テンションと戦略なんですよね。
ちなみに私は、「アフィリエイト向きのテンション」が苦手です(笑)
だから仕事のメインはあくまでライティング受託で、サイト作りは趣味の範疇です。そしてこのサイトを見ていただいてもわかるとおり、モノやサービスを宣伝する記事はほとんど書きません。