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小説「シャンバラとアセンション」Vo.7

エピソード14


エンは、集落の中ほどにある一軒の家に、

真っ直ぐ入っていった。

エンの家であるらしかった。



簡素な木造の、一軒家である。

隙間風が入るような、原始的な、平屋の家屋である。

ただ、

寒くないため、隙間風は問題にならない。


この程度の家屋であれば、

専門家や経験者が1人2人付いていれば、

私でも建てられそうな気がする。

何千万円も業者に支払う必要性は、感じられない。


実際、この家も、

エンたちの家族だけで、建てたらしい。



家の中は、ゴザのようなものが敷き詰められていた。

つまり、土足厳禁だ。

作りは原始的だが、

非常に清潔にされている様子が、伺われた。



間取りは、2DKといった具合か。

LDKと呼ぶには、やや狭いか。

雑魚寝のスペースが確保されているので、LDKと呼べなくも無い。

12畳ほどのLDK(?)と、6畳ほどの部屋が2つ。


LDKと各部屋には、ドアというものが、無い。

すだれが掛けられていたが、

目隠し目的ではなく、飾りの役割を、超えないだろう。

「芸術作品の一環なのだ」と、エンも言っていた。

気分によって、しょっちゅう作り替えるらしい。



「なぜこんなに、開放的な作りなのか?」

と、エンに訊いてみた。


裸もセックスも恥ずかしがらない彼女らにとって、

無闇にドアやふすまで密閉することは、

通気性を悪くして、カビやホコリの要因となるだけなのだ。

それらの対処に追われるくらいなら、

全てを開放して暮らすほうが、ずっと快適だし、楽であるらしい。

…ごもっともである。


私は、自宅に帰った後、

部屋のクローゼットを開け放ったりして、

エンたちの賢い環境作りを、参考にさせてもらった。


確かに、

カビやダニ、ホコリに関する問題が、

一気に、軽減してしまった!



部屋の様子に戻る。

LDKにも、各部屋にも、大きな窓があった。

通気性ということは、とても重要視されていた。

(通気性を重要視すればするほど、プライバシーは壊れるのだが。)


窓には、窓ガラスがはめ込まれていた。

ガラス技術は、あるようだ。


カーテンは、無い。

…本来的なカーテンの役割とは、「目隠し」と「保温」だろう。

「目隠し」の必要性は、感じていない人たちだし、

常に20度もあれば、「保温」も必要無さそうだ。


但し、

オシャレの一環として、カーテンめいたものを取り付けることは、

あるらしい。

そういうものは、もっぱら、自分で作る。

友人から譲り受ける場合もあるが、

とにかく、何万も出して買うものでは、無い。



エピソード15


家の中には、照明が灯る。

各部屋に、照明が備え付けられている。

ただし、

窓から入る自然光によって、

照明の必要性というのは、さほど無いらしい。



テレビもあった。

LDKには、20インチ程度の、ブラウン管型の太ったテレビが、

置かれていた。

20年前の日本から、持ってきたような雰囲気だ。


なんでも、

液晶テレビも、プラズマテレビも、作る技術は、あるらしい。

しかし、それらは、「場所を取らない」という利点はあれども、

ブラウン管に比べて、圧倒的に画質が悪いため、

シャンバラでは、ブラウン管のほうが好まれるそうだ。


…これは、

私も、遠き日本の地で、日がな、感じていた…

私の祖父の家には、ブラウン管テレビが生き続けていたが、

どうにも、20万円の液晶・プラズマよりも、

29,800円の、98年製のブラウン管のほうが、鮮明なのだ…


私たちは、商業者たちに、まんまと騙されている…。

「横長のブラウン管テレビ」というのを作れば、

それなりの需要が、あるような気がする。


エンも、

「3次元社会の人々は、商業者に踊らされ過ぎだ」

と、漏らしていた。

大衆が変わらないと、

商業者や政治家は、変わらないのだそうだ。

なにしろ、

商業者も政治家も、大衆の一部なのだから…

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