小説「ガイアの夢」Vol.2
エピソード2
自分自身が、
「夢を追いかけるほどの勇気がありません」
って縮こまってるだけなら、
まだ、イイよ?
でも、
現代人たちっていうのは、
「まだ、夢を追いかける情熱を失っていないヒトたち」に対しても、
冷たい氷水をぶっかけるようなコトを、しちまいやがるんだよ(笑)
僕は、
音楽活動をしていたから、
周りには、「夢追いフリーター」という人種が、腐るほど、居た。
20年も昔だったら、
「夢追いフリーター」の恋人になるようなヒトは、
それがどんだけケタ外れな夢であっても、
その夢を、その夢追い人を、
「全面的にバックアップ」するような、熱い気概があった。
「運命共同体」だった。
その夢追い人が夢を達成することは、
すなわち、その恋人の夢が達成されることだった。
けれども、
10年ばかし前からは、そうじゃナイんだ(笑)
現代の、「夢追い人の恋人」たちというのは、
やたらと、「夢追い人の足を、引っぱりたがる」のさ!!
たとえば、
ミュージシャンを見てみようか?
あるオンナのコが、あるアマチュア・バンドのライブを観て、
そのバンドのギター・ボーカルに、恋をする。
…まぁ、よくあるハナシさ。
そのオンナのコは、
彼の、どこに惚れたと思う?
楽曲を作る才能や、ステージでも物怖じしない度胸、
全てのファンに、平等に優しく接する博愛性、
社会常識に流されない、芯の強さ、
世知辛い世の中を笑い飛ばせる楽天性…
まぁ、100%、こんな要素で間違いナイよ。
そうだろう?
彼女、猛烈なアタックの末に、
そのギター・ボーカルの「恋人の座」をGETしたら、
どーーーーなると思う!?
面白いよ!!
豹変しちゃうんだ(笑)
「ねぇ、アツシ、
いつまで夢追いフリータとか続けるつもり?
音楽するのはイイけどさぁ、
居酒屋のバイトとかって、マジ考えらんないから、
商社マンとかそういうヤツで、正社員になってくんない?
それから音楽したって、遅くナイでしょ?
…つーか、
いい加減、車の免許くらい、取ったらどうなの?
私が妊娠したとき、誰が病院に運んでくれるワケ?
母子ともに、死んじゃってもイイの?残酷ー。
あとさぁ、
ライブん時だけどぉ。
ファンのコたちにデレデレすんの、止めてくんない?
とりあえず、
ファンのコとケータイ連絡先交換するの、禁止ー!」
…とまぁ、こんな具合だよ(笑)
彼女は、
「ヒトと違う才能を持ち、ヒトと違う生き方をするアツシくん」
だからこそ、惚れ込んだハズだろう?
なのに、
いざ自分が、恋人の座をGETし、
彼が24年間掛けて培ってきた個性を、一通り吸い取り尽くしたなら、
今度は、その個性を、「真っ向否定」しはじめるんだ!!
…で、最終ウェポンが、
「早く、結婚しようよ!
オバサンになってからウェディング・ドレス着たんじゃ、
親族一同の、笑い者になっちゃうよ!!」
コレさ(笑)
夢追いフリーターが、「結婚」の2文字に踏み切ったら、
まず、間違いなく、
3年後には、ライブ活動からは足を洗って、
カタギをやってるよ(笑)
あの、切なく美しいメロディは、
彼にしか、産み出せなかったんだぜ?
でも、
家の壁を白く塗るのは、他にも代役が立てられるんだよ!
…こうして、「安定志向のオンナのコ」たちは、
夢追いフリーターたちの才能を、
どんどん、どんどん、食い潰していってしまう…
今日も、今、この瞬間も、
恐ろしく残酷なまでに、食い潰し続けているんだ…!!
一体、
このような無残な結果に陥ったミュージシャン仲間が、何人居るか…
数え上げたら、キリがナイ…
…んで、
このオンナのコ、その後、どうなると思う?
「彼女のために、夢を諦めて、カタギに納まった彼」
に、愛想を尽かしちゃうんだ(笑)
で、更に!
彼と同じような声をした、メジャーなアーティストにゾッコンになって、
ファンクラブにまで入ったりなんかしちゃって、
他人の(その彼の)食いぶちでもって、
すでに無数のファンに支えられてるアーティストに、
お金を注ぎ込み始めるんだよ(笑)
そのメジャー・アーティストが、
「若かりし日の夢ぇ~
それをオマエとぉ~ 取り戻しに行こぉ~!」
なんて、クドい演技顔で熱唱しようモンなら、、
ついには、乳幼児をほったらかしてまでして、
沖縄公演やなんかにまで、追っかけていっちゃう…