小説「ひまわりと太陽」Vol2
エピソード4
…案の定、
台風がそのお薬を吹き飛ばしても、
ご主人は、新しいヤクルトを、ぼくの鉢に挿してしまった。
けれど、案の定、
もう1回4日後に台風が来て、お薬を吹き飛ばしたら、
ご主人は、ヤクルトを挿すのは、諦めたみたいだった。
お薬だけが無くなっているのを見て、7歳の娘さんが、
「ひまわりさん、お薬キライなんじゃないのー?」
って、告げ口してくれたのが、大きかったんだと思う。
ご主人は、
「あら、そうかもしれないわねぇ」と言ってたよ。
なんでか知らないけど、
大人よりも、子どもたちのほうが、
草花の上手な育て方を、よく知ってるんだよね。
人間っていうイキモノは、
長生きすればするほど、大切なことを忘れちゃうらしいよ?
エピソード5
ぼくは、
8月に入ると、ぐんぐん大きくなった。
娘さんの背を飛び越えて、ご主人の背も飛び越えた。
ぼくはもう、大人のひまわりになっていた。
…いつまでが子どもで、いつからが大人なのか、
ぼくには、よくわからない。
ニンゲンは、どうなの?
いつまでが子どもで、いつからが大人なの?
子どものほうが、素直だし、大きなオーラを持ってるようだけど、
どうして、大人の振る舞いをするようになっちゃうの?
ぼくも、中学校の教室とかに暮らせば、
そういう事情がわかるようになるのかなぁ。
たいてい、
小学生は透明なココロを持っているけれど、
中学生になると、濁ったココロになってしまっているよ?
年上のヒトのこと、「センパイ」って呼ぶのが、よくないんじゃない?
みんなで同じ制服着るのが、よくないんじゃない?
エピソード6
ぼくにも、それなりに大きな花が咲いたよ。
ぼくは、いっつも太陽のほうを見ていた。
朝は東のほうを見て、
昼は南のほうを見て、
夕方は、西のほうを見た。
太陽に顔を向ければ向けるほど、エネルギーがみなぎってきた!
緑のお薬なんて無くても、
太陽を見つめてるだけで、ぼくは、大きくたくましくなれた。
娘さんが、
日に日に大きくなる僕を、毎日、ながめに来てくれた。
毎日、背くらべをしては、
ぐんぐん大きくなるぼくに、ホレボレしてくれてた。
娘さんは、ぼくの言葉がわからなかったけど、
ぼくと娘さんは、仲良しだった。
でも、
娘さんがベランダで、ぼくと遊んでいると、
ご主人が、「病気になっちゃうから、家に入りなさい」
と言って、娘さんを連れ去っちゃう…
ニンゲンのオトナは、
太陽の光に当っていると、病気になると思っているらしいよ。
実際は、逆なんだけどなぁ。
毎日毎日、
太陽の光をめいいっぱいに浴びて暮らすと、
ぐんぐんたくましく育つし、健康になれるんだよ。
オトナたちは、
「紫外線が有毒だ」とかナントカ、難しいことを言ってる。
でも、
それって、ウソなんだよ。
ウソっていうか、
ほんの時々しかお外に出掛けないヒトたちにとっては、
紫外線は、有毒になっちゃうの。
ぼくとか農家のおばちゃんみたいに、
毎日お外で、太陽と遊んでいるヒトたちにとっては、
紫外線だってなんだって、毒にはならないんだよ?
夏の暑さに慣れちゃったなら、
ぜんぜんお水飲んだりしなくても、病気にはならないよ♪
太陽本人が教えてくれたんだから、
間違いないさ♪