日本の多くの家庭では、「限界まで在宅介護でがんばろう」と気負ってしまいます。それが介護者の精神的負担、肉体的負担を押し上げ、結果的に経済的な負担も増やしてしまいますね。
在宅介護を気負い過ぎてしまう理由は、「普通の家庭はこれくらいやっているだろう」というイメージにあるでしょう。または、要介護の親御さんから、「私も昔は親の介護をがんばったものよ」といった話を聞かせれ、遠まわしに尻を叩かれてしまいます。
しかし在宅介護は、昔と同じようには出来ないものです。
昔は費用の負担は1割で済んだ。今は3割負担の家庭も、
介護保険の存在によって、訪問介護やデイサービス利用、介護用品の購入などが格安でまかなえるようになります。しかし、その状況は昔と今では異なっています。
昔は、費用の負担額はどの家庭も一律で1割で済みました。訪問看護に来てもらうのに5万円掛かるとしても、5,000円の負担で済んだのです。
しかし現在では、所得によっては2~3割を負担しなければなりません。
デイサービスの利用も、介護用品の購入も、あれもこれも負担がちょっとずつ増えると、総額は大きく膨らみます。
とにかく介護にかかる金銭的負担が、大きくなっているのです。
昔の高齢者よりも、今の高齢者のほうが求めるものが多い。
たとえば特養というのは、昔はもっぱら相部屋でした。しかし公的施設である特養も、今では個室のプランが増えています。「相部屋でも気にしない」という要介護者が減っているからです。
昔は高齢者は何も欲しがらなかったものですが、今は70歳を超えてもデパ地下スイーツを欲しがったり、ブランド時計を欲しがったり、パチンコに行きたがったりします。
高齢者の生活にかかる費用が大きく増えているのです。
そして、介護の費用だけでなくそうした生活の費用、嗜好品やレジャーの費用までも、介護者家族が工面しなければならない時代になっています。
使い古しの布団で満足する高齢者はおらず、むしろ家族で一番高級な布団を用意してあげなければならないでしょう(布団は介護用品ではないので介護保険は下りないのに)。
だから、在宅介護は昔と同じようには出来ないのです。
上記のような実情があり、在宅介護は昔と同じようには出来ないのです。
あまりにも手間がかかりすぎ、お金がかかりすぎます。
ですから、「母は昔これをやったのだわ」などと考えるのはやめましょう。お母さんや昔の人と競うのはやめて、今もう在宅介護が辛いと感じているなら、老人ホームの入所を積極的に検討しましょう。その方向で、要介護の親御さんを説得していきましょう。