4 民泊の今後の展望。
民泊ユーザーが増加し続けていることはわかりました。ではこれからは、民泊業界はどのような展望を見せていくのでしょうか?そして、社会への影響は?
4-1.大手の参入で新たな流れが始まる。
これまで、日本のAirbnb(エアビーアンドビー)民泊は、個人規模のホストや投機家によって支えられてきましたが、業界の活況に目をつけ、大手企業が参入しはじめています。
特に建設関係の大手は、自ら大型の宿泊施設を造り、効率よく多人数を収容するゲストハウスやシェアハウスのようなスタイルを企てているようです。これにより、安さや管理者不介入だけをウリとしていた家主不在型民泊は淘汰されていくでしょう。
4-2.投機型の民泊は生き残りが難しい。
投機型民泊の受難は、大手資本の巨大施設にパイを奪われるだけではありません。日本各地のマンションや自治体はAirbnb(エアビーアンドビー)民泊に難色を示しており、特に管理者が常駐しない民泊施設に関しては営業を認めなくなってきています。この流れが大きく変わることはないでしょう。
また、日本政府も投機型民泊を民泊とは認めない方針で、「グレーライン」と揶揄される投機型民泊は完全にブラック扱いされるようになってしまいそうです。「対面チェックインの義務化」「年間営業日数180日以内」あたりが法制化すると、いよいよ投機型民泊は経営ができなくなります。
4-3.価格の下落はまだまだ続く。
つい1年ほど前まで「1泊3,000円」と言われていた「個室」タイプの民泊相場も、2016年秋、すでに1泊2,000円前後まで下がってきています。コストのかさむ投機型ホストはこの価格ラインについていけなくなっているでしょうが、相場価格はまだ下がるでしょう。ホームステイ型民泊のホストにとっては、コストが掛かっていないゆえ黒字最低ラインというのは無いに等しいので、Airbnb(エアビーアンドビー)社が設けている最低限度額10ドル(約1,000円)までは、下げ競いが続くと予想されます。
4-4.超大手とホームステイ型民泊だけが生き残る。
こうしてみていくと、日本のAirbnb(エアビーアンドビー)ブームを騒がせた投機型ホストの面々は、価格競争と法規制の壁に阻まれて、淘汰されていくでしょう。「最初は投機型ホストがけん引し、成熟期にはホームステイ型が主流となる」という構図は、Airbnbの創始者も端から予想していたとコメントしています。
ビジネスとしての民泊は、超大手の担う大型施設だけが生き残り、それ以外は各地のホームステイ型民泊のホストが気ままに運営していくような様相になりそうです。
4-5.民泊のそれが飛び火し、宿泊業界全体の低価格化が進んでいく。
超大手の民泊にせよにホームステイ型民泊にせよ、1泊の値段は2,000円を切る程度の格安値となるでしょうが、この低価格化は従来のホテルや旅館にも影響を与え、宿泊業界全体の価格低下が為されるでしょう。
この「簡素化&低価格化」の流れは、同じく旅行業界においてもはや大衆権を得た、LCC(格安航空券)の起こした価格破壊によく似ています。
4-6.若者たちの人情回帰が、思いがけない展開を生む?
現状では日本人は民泊宿泊を好まないので、いくら安価で良心的なホームステイ型民泊が増えても宿泊客は外国人ばかりになりそうです。しかし、変化の兆しはあります。
前述のとおり、近年の若者たちには民泊的な交流やローカリズム、共同生活に親しみをもつ人々が少なくありません。彼らが成人し、経済的余裕と社会的自由を手にしたとき、何か思いがけない、今までの日本には無かったような、民泊的な共同生活カルチャーを作りあげる可能性を感じます。1970年代頃のアメリカのヒッピーカルチャーに近いムーヴメントが、日本にも起こるのでしょうか?(民泊というよりはシェアハウスを舞台に営まれるものかもしれませんが。)
ヒッピーを良い文化と言ってよいものかはわかりませんが、民泊の持つ人情的な魅力が日本に根付いていくのであれば、それは何か有意義で面白いことになるかもしれませんね。