バブルが弾けた1990代初頭以来、何においても盛り上がりに欠ける日本の中で、「民泊」ほど右肩上がりという言葉の当てはまるカテゴリーは無いかもしれません。
民泊は、ここ5年ばかりの間に世界中を席巻し、もはや宿泊ビジネス・宿泊形態において一つの重要な柱に成長してきています。民泊をあまり利用しない日本人にとってはピンとこないことかもしれませんが、世界視野で見たときにどれだけ民泊カテゴリーが大きな存在感を獲得してきているか、それは目を見張るものが!
当ページでは、民泊の利用者数の伸びやその社会的影響について解説します。民泊といってもAirbnb(エアビーアンドビー)にまつわるものが中心となりますが、細かなデータを取っているのがAirbnbくらいなものですから、ご容赦いただければ幸いです。
1 「民泊…?」とピンとこない人が多いのは、ここ5年ほどの流行だから。
「民泊が世界で流行している」「民泊が一つの宿泊形態として確立した」「民泊ビジネスが盛況である」などと言われても、ピンとこない人は少なくないでしょう。なにしろ宿泊者として民泊を利用する人の少ない日本では、実感している人は少ないかもしれません。さらには、民泊というカテゴリーが隆盛してきたのはほんの5年ほどのことなのです。日本についてのみ言えば2014年からの2年ほどに過ぎず、まだモバイルゲームを高校生しか知らないのと同じようなものでしょうか。
1-1.民泊ブームを押し上げたのは、なんと言ってもAirbnb!
「民泊と言えばAirbnb(エアビーアンドビー)」と言っても過言でないくらい大きな存在感を示しているのが、アメリカ発の民泊仲介サイトAirbnb。まずはAirbnbを知ることから始めましょう。
1-1-1.民泊モンスターサイトの誕生は、小さな民泊から始まった。
Airbnb(エアビーアンドビー)は2008年、アメリカのロサンゼルスで産声を上げています。産声という言葉がピッタリくるような、ビジネスにおいては素人とも言える若者たちの、小さな部屋貸し小遣い稼ぎが発端でした。
1-1-2.瞬く間に世界を席巻!
しかし、創業者の彼らには、斬新なアイデアと有能な仲間、そして何よりも、世界同時不況のあおりゆえ、「安く泊まりたい」というたくさんのニーズがあったのです。そのため、Airbnb(エアビーアンドビー)が世界を席巻するのはあっという間でした。2012年頃にはもう、遠く大西洋を越えてヨーロッパ各国でも一大カルチャーとして大衆権を得るほどに成長しています。
1-1-3.2014年には日本支社が誕生。日本語でも利用ができるように。
日本に本格的に上陸したのは2014年5月のこと。ついにAirbnb(エアビーアンドビー)の日本支社が東京に立ち、日本語でサイト利用することができるようになりました。
また、「誰でも起業できる」「空き部屋が収入に変わる」という手軽さから、起業家や投資家たちを中心にクチコミが広がっていきます。そのため日本では、「カルチャーの1つ」というよりも、「ビジネスの1つ」という印象を抱いている人が多いのです。
1-1-4.もはやエクスペディアをしのぐ勢い!
2014年からのここ2年ほどにおける、日本のAirbnb(エアビーアンドビー)の伸びはすさまじいものがあります。登録ホスト件数は30,000件を超え、今やどこの町にも、数件ずつはAirbnb物件を見つけることができるでしょう。
同時に、世界全体でもAirbnbの伸びは順調で、Airbnb社の時価総額やヨーロッパにおける利用者数は、もはや世界最大のホテル検索サイト・エクスペディアをもしのぎそうな勢い!
「エクスペディアと肩を並べている」と言えば、日本の皆さんにもAirbnbの快進撃がどれほどのものか、おわかり頂けるのではないでしょうか。
1-2.見直されはじめている、古き良き民泊。
ご存じのようにAirbnb(エアビーアンドビー)は、投機型ホストや一部の外国人ゲストのマナー違反によって問題をまき散らしてもいます。しかしその一方で、「民泊」という文化や体験、宿泊形態が大きく脚光を浴びせる役目を果たしました。
1-2-1.「農家民泊」は日本独自の、そして日本らしい民泊カルチャー。
日本ではAirbnb(エアビーアンドビー)に負けじと、「とまりーな」という体験民泊(農家民泊)専門のサイトが台頭してきています。
農家民泊は、実は2007年くらいに日本で芽を出しはじめていたのをご存じですか?しかし当時は、あくまで各地方自治体が地域の民泊をとりまとめてささやかにサイトを作る程度で、利用者もエコツーリズムやグリーンツーリズムに興味の強い一部の日本人に限られていました。「とまりーな」の登場は、バラバラだった農家民泊の検索サイトが統一され利用しやすくなり、また農家民泊をキャッチーなものにした功績もあると言えそうです。
1-2-2.各地の学校が、民泊を修学旅行に活用しはじめた!
さらに興味深い現象として、各地の中学・高校が、修学旅行時の宿泊場所や体験コンテンツとして民泊を選択する流行が起きてきていることは、特筆すべきことでしょう!
「とまりーな」や農業民泊の活況は、経済的動機が大きな引き金になっている実情もありますが、学校の修学旅行民泊は様子が異なります。経済効果やビジネス云々ではなく、純粋に民泊体験の持つ様々な側面が、子供たちの情操教育にとても有意義であると認められたゆえのものです。「学歴世界一位!」などと数字ばかりを追いかけたがる日本政府が、本当に価値のある情操教育に目を向け重要視するようになったことは、これからの日本にとってどれほど有意義かはかり知れません。
1-2-3.若者たちには、民泊への潜在的な憧れがある?
日本は基本的に、民泊を毛嫌いする傾向が強い国と言えます。日本のAirbnb(エアビーアンドビー)の宿泊利用者数の90パーセントは外国人によるものという統計が出ていますが、実際に日本人は、民家宿泊をあまり積極的に行う様子はありません。「怖い」「交流が面倒くさい」といった動機のほか、過剰潔癖な傾向にある現代日本人にとって、他人の家で寝泊まりすることに不潔感めいたものをおぼえる人が少なくないようです。
しかし、テレビに目を向けてみるとどうでしょうか?東京の洗練されたマンションを舞台に繰り広げられるトレンディードラマは軒並み視聴率を落とし、代わりに流行しはじめたのは、地方の民家に宿泊をしたり、無名な町をぶらり散歩するような、人情とローカリズムに溢れた内容のものが目立ちはじめました。大衆娯楽のこうした人気推移傾向には、日本人にも、特に若者たちに、潜在的に民泊的な交流への憧れがあることを示していると言えないでしょうか?