不動産を所有しているオーナーであればおよそすべての人が検討した(している)であろう、民泊への不動産転用。巷で噂のAirbnb(エアビーアンドビー)などを使った、新しいカタチの不動産ビジネスです。
今や「民泊」という字を見ない日はないくらいに話題に上るようになり、その内容も「普通に貸すより3倍儲かる!」といった思わずヨダレが出そうなもの。民泊セミナーが活況になるのもたしかに頷けますが、でもちょっと待ってください!
儲かるという噂が飛び交っていると同時に、すでに民泊事業から撤退する不動産オーナーも出始めている事実を、ご存じですか!?民泊は決してノーリスクなビジネスではありません!
1 誰が儲かっている!?民泊ビジネスの仕組み。
まずは、Airbnb(エアビーアンドビー)を軸とした民泊ビジネスの仕組みについて、一通り解説していきましょう。あなたがどうしても不動産投資先に民泊を選びたいのであれば、このトピックを読んでいただくことで概要は掴めるはずです。
1-1.民泊はホテルじゃない。だから参入の敷居がとても低い。
一般人が宿泊業に参入するなど、これまでは夢のまた夢でした。不動産を2つ3つ所持している人であってもです。それはなぜかといえば、宿泊業には「旅館業法」という法律のカベが立ちはだかっていたからですね。よほど宿泊施設用に特化した不動産物件でなければ、宿泊業を営むことなどできなかったのです。ゲストハウスのような簡易宿所ですら、トイレを2つ3つ備えていないと経営できないのですから。
しかし民泊は、ホテルではありません。厳密に言えば民泊も、簡易宿所規約をクリアしていなければならないものなのですが、民泊仲介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)は登録ホストに対して物件の審査を設けていない(「審査」をしないだけで「規約」が無いわけではない。)ため、およそ誰でも民泊ビジネスを始めることができたのです。
また、Airbnbが台頭する以前も、留学生をもてなすホームステイは、旅館業法違反を咎められることなく、報酬を貰いながら営むことができました。
1-2.欧米人にとっては趣味。日本人にとってはビジネス。
Airbnb(エアビーアンドビー)は、日本支社設立の2014年よりも一足早く、2008年にアメリカで誕生し、欧米はじめ世界中を席巻しています。民泊ホストはすぐに何十万人にも達しましたが、彼らはビジネスをしているというよりは趣味で旅行者をもてなし楽しんでいるニュアンスが強かったのです。しかし日本の場合、「新しい不動産ビジネス」として、投機的な目的で参入するオーナーがあふれ返ることになりました。
日本人のオーナーは、民泊というものがよくわからなかったのですが、すでに宿泊需要は高まっていたため、質がどうであれ、オープンすれば予約が入ります。そこから、「民泊は楽に儲かる新ビジネス!」といった噂が飛び交いはじめました。
1-3.家主不在の投機型民泊ではトラブルが多発!彼らは「民泊代行業者」や「民泊セミナー業者」に鞍替えしはじめる。
稼働率は盛況でしたが、家主のいない投機型民泊では、トラブルが多発しました。そして撤退を余儀なくされるホストたちが現れます。
しかし彼らは、民泊業界から完全に身を引こうとは考えなかったのです。それまでに培ったノウハウで「民泊代行業者」や「民泊セミナー業者」に転じることで、稼ぎ続けようと目論むのでした。
1-4.「民泊代行業者」や「民泊セミナー」の力を借りればおよそ誰でも参入できる。
彼らは、「民泊セミナー」によって民泊参入のイロハを教え、「民泊代行業」によって必要な雑務をあらかた肩代わりしました。これによって、不動産さえ持ちあわせていれば誰でもAirbnb(エアビーアンドビー)民泊に参入することができたのです。いや、不動産は持っていなくても借りることが出来ますから、不動産すら持っていなくても、誰でもビジネスを始めることができたのです。「誰でもできるよ!」というこの謳い文句に釣られて、大勢の新米ホストが参入するのでした。
1-5.第三の支援業者「民泊許可物件サイト」の台頭。
Airbnb(エアビーアンドビー)参入ホストが急増すると、不動産物件が足りなくなるという事態が起こりました。しかし、これも新たな補助ビジネスが誕生することでカバーされます。「民泊許可物件サイト」の登場です。
その名のとおり、民泊に転用可能な物件ばかりを集めた不動産サイトで、その多くは民泊代行業者が取り持っていました。「物件を紹介する代わりにウチの民泊代行業者を使ってくださいね」という仕組みです。
多くの不動産オーナーは、当初は物件を又貸しされることに難色を示していましたが、「民泊許可物件にすれば家賃を引き上げることができますよ」という民泊代行業者の誘惑に乗っかるようになっていきます。また、空き家問題の深刻な日本ですから、埋まらない空室を埋めるために民泊許可物件サイトに迎合する不動産オーナーが、増えていったのです。
こうした多くの密約・蜜月関係がすでにAirbnb民泊業界には絡み合っていて、勢力を拡大し続けています。
1-6.おかげで誰でも参入はできる。が、順調に経営できるかは別問題!
「民泊代行業者」や「民泊セミナー」、「民泊許可物件サイト」の登場により、たしかに、資金さえあれば誰でもAirbnb(エアビーアンドビー)民泊ビジネスに参入できるようになりました。しかし、「順調に経営できるか」と問えば、それは別問題なのです!
1-6-1.すでに儲からないビジネスに成り下がりはじめている。
供給よりも需要が多ければ、それはたしかに儲かるビジネスとなりますが、「供給より需要が多いですよ!」と投資家を煽り続け、新規参入者が増え続けたらどうなるでしょうか?そうです。需要と供給のバランスは逆転しはじめるのです。
2016年に入り、日本のAirbnb(エアビーアンドビー)民泊の稼働率(予約が埋まる割合)は、50パーセント前後まで下がっています。40パーセントを割る月もあるほどです!日本の民泊施設は供給過多になっているということ。
民泊代行業者に頼った投機型民泊では、稼働率が60パーセントを下回ると、オーナー側はほとんど儲けが出なくなります。つまり2016年に入り、Airbnbオーナーの2人に1人は儲かっていないということなのです!参入者の半分が赤字になってしまうビジネスを、「楽に儲かる!」と形容しあっせんして良いものなのでしょうか…?
1-6-2.不動産オーナーが許可しても、マンション側が許可するとは限らない!
問題はまだあります。ご存じのとおり、Airbnb(エアビーアンドビー)民泊はトラブル騒動が続いてしまったため、日本人大衆にはあまり良い印象を持たれていません。そのため、Airbnb民泊の経営を禁止しているマンション管理組合も多いのです。また、管理組合など存在しない一軒家やアパートの場合でも、近隣住民がクレームをぶつければやはり、撤退を余儀なくされます。
つまり、不動産オーナーが民泊許可を出したところで、それはあまり意味のないことなのです…。
1-6-3.日本政府も、投機型民泊については駆逐の意向を示している。
立ちはだかるカベはそれだけではありません。なんと、日本政府までもが投機型民泊の敵なのです!
日本政府は、民泊というシステム自体は否定しておらず、ホテル不足解消のための特効薬として期待し、規制緩和を図ろうとしています。少なくとも2020年の東京オリンピックまでは、この方針は変わらないでしょう。ただしそれは、あくまで、「ホームステイ型」の民泊に限った話なのです。
投機型民泊においてあまりにトラブルが絶えない実情を、日本政府も把握しています。そのため、投機型民泊に関しては、全面的に駆逐する意向なのです。投機型民泊とは、家主が物件に定住しておらず、民泊代行業者に業務を委託していたり、掃除の際だけ物件に顔を出すような経営形態のことを指します。
1-7.つまり、民泊に不動産投資をしてもいばらの道…。
Airbnb(エアビーアンドビー)民泊の経緯と実情が、ご理解いただけたでしょうか?
つまるところ、今からAirbnb民泊に不動産投資をしたところで、険しいいばらの道
となることは避けられないのです!